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設備コラム マンション管理組合主導給水管老朽化対策
2025.06.20

築60年マンション、給水管更新のリアルな課題と対策

こんにちは!給排水設備の専門家として、日々マンションの維持管理に携わっております。

 

今回は、都心に建つ築60年のマンションで現在進行中の「共用給水管更新工事」について、我々専門業者の視点から、最初の相談から工事に至るまでの道のりをご紹介します。

 

マンションの維持管理、特に設備の更新は多くの管理組合様にとって大きな課題かと思います。今回のケースが、少しでも皆様の参考になれば幸いです。

 

 

きっかけは一本の電話から

ある日、ある業界関係者の方から「相談に乗ってほしい物件がある」と連絡をいただきました。それが、今回ご紹介するマンションです。早速、マンションの副理事長様と打ち合わせの機会をいただきました。

 

「給水設備がもう限界…」切実な悩み

副理事長様から伺ったのは、「給水設備が老朽化し、いつ大きなトラブルが起きてもおかしくない。どうにかしなければ…」という切実なご相談でした。築年数を考えると、配管の劣化は避けられない問題です。

 

当初は、給水方式を変更することで問題を解決できないか、という方向で調査・見積もりを進めていました。しかし、詳しく調査を進めるうちに、「給水方式の変更だけでなく、共用の給水管そのものも一緒に更新した方が、将来的な安心感や効率を考えても良いのではないか」という結論に至りました。そして現在、給水方式変更と合わせて共用給水管の更新工事を実際に進めているところです。

 

1年半の打ち合わせ:なぜそんなに時間が?

実は、最初の打ち合わせから工事着手まで、約1年半という長い時間をかけて準備を進めてきました。「なぜそんなに時間がかかったの?」と疑問に思われるかもしれません。主な理由は以下の2点です。

 

  1. 管理組合様の「直接発注」へのこだわり
    通常、マンションの修繕工事は管理会社を通して行われることが多いですが、こちらの管理組合様は「管理会社を通さず、直接工事業者に発注したい」という強いご希望がありました。コストを抑えたい、透明性を高めたいといった思いがあったのかもしれません。しかし、直接発注は、業者選定から見積もり比較、契約、工事監理まで、すべて管理組合様自身で行う必要があり、多大な労力がかかります。今回はご紹介という形で弊社にご相談いただきましたが、一般的にはホームページで業者を探し、一から問い合わせをする…といった手間が発生します。
  2. 組合員の高齢化と専門知識の壁
    こちらのマンションは築年数が古く、組合員の方々もご高齢の方が多くいらっしゃいました。そのため、設備に関する専門知識を持つ方が少なく、業者選定や工事内容の判断が難しいという課題がありました。

 

業者選定も一筋縄ではいかず…

ご紹介いただいた後も、道のりは平坦ではありませんでした。築60年ということもあり、建物の構造が現在の一般的なマンションとは異なる部分が多くあります。そのため、現場調査には来てくれても、「特殊すぎて見積もりが出せない」と辞退する業者さんもいらっしゃいました。

 

そんな中、数社に見積もりを依頼し、比較検討を行いました。工事費用は決して安いものではありません。1社だけの見積もりで決めてしまうと、「もっと安くできたのでは?」「業者と癒着があるのでは?」といった疑念が生じかねません。比較検討は、適正価格を知るためにも、組合員皆様の合意形成のためにも非常に重要です。

 

幸い、最終的に比較した業者の見積金額は近しいものとなり、弊社では図面作成なども行い、工事内容の具体化を進めることができました。

 

見積もりの謎と専門家探しの苦労

実は、給水方式変更の最初の見積もりを取った段階で、思わぬ壁にぶつかりました。複数の業者から見積もりを取ったのですが、例えば「配管の口径は50mmで大丈夫です」と言う業者もいれば、「いや、もっと太い(あるいは細い)ものでないと」と、内容に食い違いが出てきたのです。

 

理事会の方々や住民の皆様は、当然ながら設備の専門家ではありません。「どちらの業者が正しいことを言っているのか判断できない…」と、大変困惑されてしまいました。結局、我々のような専門家が現場に何度も足を運び、状況を詳細に確認することで、適切な仕様を判断する必要がありました。

 

このような状況を踏まえ、私たちは管理組合の皆様に「マンション管理士のような専門家にも相談して、運営や業者選定についてアドバイスをもらってはいかがでしょうか」と提案しました。マンション管理士は、管理組合の運営全般をサポートする専門家です。

 

そこで、管理組合様は役所に相談し、マンション管理士の方を紹介してもらうことになりました。しかし、残念なことに、その方はマンション管理の専門家ではあるものの、設備関連の知識はあまりお持ちではありませんでした。結果として、設備に関する具体的な判断については、そのマンション管理士の方から私たちが相談を受ける、という少し複雑な状況になってしまったのです。この経験から、専門家を頼る際には、その方の得意分野や実績を事前にしっかりと確認することの重要性を改めて痛感しました。

 

現在、鋭意工事中!

そして現在、いよいよ共用給水管の更新工事が進んでいます。長期間にわたる準備と検討、そして様々な課題を乗り越えてきただけに、感慨もひとしおです。

 

今回のポイント

  • 築古マンションの給水管更新は待ったなしの課題。
  • 管理組合主導での工事は、労力がかかるが、コスト削減や透明性向上のメリットも。
  • 組合員の高齢化や専門知識不足は、外部の専門家のサポートで補うことが可能。
  • 業者選定は複数社から見積もりを取り、比較検討することが不可欠。
  • 見積もり内容に食い違いが出た場合は、専門家の意見を聞きつつ、現場確認を徹底することが重要。
  • 専門家を依頼する際は、その専門分野や実績をしっかり確認することが大切。

次回の記事では、実際の工事の様子や、管理組合主導で工事を進める上でのポイントなど、さらに踏み込んだ内容をお届けできればと思います。
この記事が、同じような課題を抱えるマンション管理組合の皆様にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

 

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