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設備コラム マンション排水管更新工事管理組合老朽化対策長期修繕計画
2025.07.02

マンション排水管の更新工事|費用・流れ・計画のポイント【管理組合向け】

 

マンションの長期修繕計画の中でも、特に大きな課題となるのが「排水管の更新工事」です。

 

建物の寿命を左右する重要な工事でありながら、「住民への負担が大きい」「費用がかかる」「何から手をつければいいか分からない」といった理由で、なかなか計画に踏み切れない管理組合様も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、多くのマンションで排水設備の改修に携わってきた専門家の視点から、排水管更新工事がなぜ大変なのか、そして、その課題を乗り越え、工事を成功させるためのポイントについて、実際の現場の声をもとに詳しく解説します。

 

1. マンション排水管工事が「大変だ」と言われる3つの理由

排水管の更新工事は、建物の築30年~50年頃に検討される、文字通り「一生に一度」の大規模な工事です。 多くの住民の方がこれまで経験したことのない工事だからこそ、様々な負担や不安が生じます。

 

  1. 数日間の「在宅」が必須になる
    最も大きな負担が、工事期間中の在宅協力です。 排水管は各住戸の室内を通っているため、壁や床を解体して配管を交換し、内装を復旧するまでの一連の作業が必要になります。 一般的に、この作業は平日日中(9時~17時頃)に連続して行われます。期間は工事の規模によって3日〜6日程度と変動しますが、4〜6日間かかることが多く、「そんなに仕事を休めない」という声が上がるのは当然のことです。
  2. 日常生活への影響
    工事中は一時的にトイレやお風呂、キッチンが使用できなくなります。夜間には使えるように仮復旧を行いますが、日中の不便は避けられません。 そのため、共用部に仮設トイレを設置したり、ご高齢の方にはポータブルトイレを貸し出したりといった対策が必要になります。
  3. 合意形成までの道のりが長い
    こうした大きな負担を伴うため、住民の皆様への説明と理解を得るプロセスが不可欠です。工事の日程を少なくとも3ヶ月前には告知し、場合によっては介護サービスの調整など、各ご家庭の事情に合わせた準備期間も考慮しなければなりません。 業者選定なども含めると、計画開始から着工まで1年以上かかることも珍しくありません。

 

2. 計画段階で大きな課題となる「費用」と「不公平感」

住民負担と並行して、計画段階で大きな課題となるのが「費用」の問題です。特に、住民間の「不公平感」に繋がる費用負担の線引きは、非常にデリケートな問題となります。

 

  1. 専有部の内装復旧費用
    排水管工事は共用部の改修と位置づけられるため、修繕積立金から費用が支出されるのが一般的です。 しかし、壁紙や床材など、専有部の内装を復旧する際に問題が生じます。
    リフォームでこだわりの壁紙にしているお部屋と、標準仕様のお部屋の復旧費用を、すべて修繕積立金で賄うのは不公平感に繋がります。 そのため、「標準仕様の費用までは管理組合が負担し、差額は個人負担とする」といったルールを事前に取り決めておく必要があります。
  2. 水まわり設備の交換費用
    さらに難しいのが、配管のルート上、浴室やキッチンなどの水まわり設備を一度解体しないと工事ができないケースです。 この場合、設備ごと新しく交換する必要があり、非常に高額な追加費用が発生することもあります。 特定の系統の部屋だけ水まわり設備が新しくなることになり、他の住民の方々から大きな不満が出てしまう可能性があります。
    これも工事を始める前に、費用負担をどうするのか、管理組合内で十分に議論し、合意を形成しておかなければならない重要なポイントです。

 

3. 工事計画を立てる前に、まずやるべきこと

「漏水が多発してから慌てて計画を始める」というケースは少なくありませんが、それでは十分な検討ができず、住民の皆様の負担も増してしまいます。問題が深刻化する前に、まずはご自身のマンションの現状を正確に把握することが重要です。

 

計画を始めるにあたり、まず確認したいのが竣工時の図面、特に配管ルートがわかる「設備図面」の有無です。もし図面がなければ、配管がどこを通っているかを調査するところから始めなければならず、時間も費用も余計にかかってしまいます。

 

次に、専門家による調査を実施し、排水管の「材質」と「劣化状況」を調べます。使用されている配管の材質によっては、そもそも更新が不要なケースや、より長寿命なものもあります。調査によって、あと何年くらい持つのか、更新が必要なのか、部分的な補修で対応できるのかを判断することが、計画の第一歩となります。

 

とはいえ、「図面がどこにあるか分からない」「誰に調査を頼めばいいのか見当もつかない」など、何から手をつけていいか全く分からない、という管理組合様もいらっしゃるでしょう。

 

そのような場合は、まず信頼できる相談相手を見つけることが最優先です。日頃からお付き合いのある管理会社はもちろん、私たちのような専門業者に直接ご相談いただくことも有効な手段です。また、場合によっては自治体の窓口などで相談に乗ってもらえるケースもあります。まずは一歩踏み出し、専門家の知見を借りることから始めてみましょう。

 

4. 計画をスムーズに進める「テスト施工」という選択肢

現状調査を進め、いざ見積もりを取っても、工事内容が複雑なため、その金額が本当に妥当なのか判断が難しい場合があります。

 

そこでおすすめしたいのが、本格的な工事の前に、対象となる住戸の一部などで試験的に工事を行う「テスト施工」です。 実際に壁や床などを開口して配管の状況を確認してみることで、図面だけでは分からなかった問題点を発見でき、より正確な工事工程と費用を算出することが可能になります。

 

テスト施工を行うことで、総会でより精度の高い予算案を提示でき、住民の皆様への説明も具体的に行えるため、合意形成がスムーズに進むという大きなメリットがあります。

 

5. まとめ:排水管更新工事は信頼できる専門家との計画が成功の鍵

マンションの排水管更新工事は、住民の皆様の協力なしには成り立ちません。だからこそ、在宅負担や費用、不公平感といった課題に真摯に向き合い、一つひとつ解決していく丁寧な計画プロセスが何よりも重要です。

 

この記事でお伝えしたポイントが、皆様のマンションの改修計画を前に進めるための一助となれば幸いです。

 

排水管の更新工事は、専門的な知識と多くの調整が必要な、管理組合様にとって大きな事業です。ご不明な点や、ご自身のマンションの状況に合わせた具体的なご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

こちらのお問い合わせフォームよりご連絡いただければ、担当者が丁寧にご説明、サポートさせていただきます。