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設備コラム 更新工事管理組合長期修繕計画
2026.02.27

受水槽から増圧直結への変更費用はいくら?10年前との驚きの差額

  • 約10年前と比較し、マンションの給水方式変更(増圧直結)工事費用は約1.5倍に高騰している。
  • 内訳を見ると、材料費が約60%、労務費が約40%、処分費等のその他経費が約45%上昇している。
  • 職人の高齢化による引退などで、10年後にはさらに費用が20〜30%高騰する可能性が高い。
  • 「まだ使える」と工事を先延ばしにすると、いざ故障した際に長期間の断水や割高な緊急対応費が発生するリスクがある。
  • 受水槽方式から増圧直結給水方式への変更は、衛生面の向上と維持費削減のメリットが大きいが、自治体の水圧調査等の事前確認が必須。

 

 

マンションの給水方式変更工事、今の費用はいくらかかる?10年前との驚きの差額

「給水方式の変更を検討しているが、工事費用はいくらかかるの?」
管理組合の方から、このようなご相談をよくいただきます。

 

結論から申し上げますと、給排水設備の改修費用はここ10年で劇的に値上がりしています。当社で実際に施工・お見積もりをした、都内にある同規模マンション(約230戸)の「受水槽方式から増圧直結給水方式への変更工事」のデータを見てみましょう。

 

  • 約10年前(2016年)の工事費用:約1,200万円(税抜)
  • 現在(2026年)の見積費用:約1,800万円(税抜)

 

なんと、約1.5倍(金額にして約600万円)も高騰しているのが実態です。「修繕積立金に余裕がないから、数年後に先送りしよう」と考えている管理組合様にとっては、この価格上昇は非常に深刻な問題です。

 

なぜ給排水設備工事の費用は1.5倍にも高騰しているのか?項目別の上昇率

「足場を組む大規模修繕ならともかく、なぜ配管やポンプの交換だけでここまで費用が上がるのか?」と疑問に思われるかもしれません。実際の見積もりデータを分析すると、全体の1.5倍という数字の内訳は、項目ごとに以下のようになっています。

 

  1. 【材料費】約60%の上昇
    古いマンションで使われている「硬質塩化ビニルライニング鋼管(VB管・VA管)」や、新しく導入する「ステンレス鋼管(SUS管)」、心臓部である「増圧給水ポンプユニット」などの価格です。世界的な金属価格の高騰や円安の影響を最も強く受けており、全体を押し上げる最大の要因となっています。
  2. 【労務費・工事費】約40%の上昇
    働き方改革関連法の適用(いわゆる2024年問題)による時間外労働の規制強化や、職人を手配するための人件費のベースアップです。確かな技術を持つ配管工が慢性的に不足しているため、人工(にんく=職人の日当)が大きく上昇しています。
  3. 【その他経費】約45%の上昇
    撤去した古い配管や受水槽の「産業廃棄物処理費」や、「仮設費・運搬費」なども、燃料費の高騰や環境規制の厳格化に伴い、軒並み値上がりしています。

 

このように、特定の項目だけが上がっているのではなく、工事を構成するあらゆる要素が連動して値上がりしているのが現状です。

 

10年後の工事費用はどうなる?待てば下がる?プロが予測する推移と根拠

「今は時期が悪い。あと10年待てば、物価が落ち着いて安くなるのではないか?」
理事会でそのような意見が出ることがあります。しかし、設備業者の最前線にいるプロの視点から断言します。10年後に工事費用が下がる可能性は極めて低く、むしろ現在からさらに20〜30%(1.2〜1.3倍)高騰すると予測されます。その明確な根拠は以下の2点です。

 

  • 根拠1:熟練職人の大量引退による「圧倒的な供給不足」
    現在、建設・設備業界で働く技能者のうち、約3分の1が「60歳以上」と言われています。これから10年の間に彼らが続々と引退時期を迎える一方で、若手の入職者は全く足りていません。「お金を払っても工事をしてくれる職人が見つからない」という需給バランスの崩壊が起き、労務費はさらに跳ね上がります。
  • 根拠2:資材価格が下がりにくい性質
    一度値上がりした工業製品や建材の価格は、よほどの経済ショックがない限り、元の安い水準に戻ることはありません(一度上がると下がりにくい性質があります)。さらに、今後は環境配慮型の新素材や、より高性能な省エネポンプへの移行が義務化される可能性もあり、部材そのものの初期コストは上がり続けるトレンドにあります。

 

つまり、現在の見積もりが1,800万円だとした場合、10年後には2,200万円〜2,400万円規模に膨れ上がるリスクを想定しておく必要があります。「待つことの金銭的メリットはない」というのが、我々プロの共通認識です。

 

「まだ使えるから」で先延ばしにする場合の注意点は?後回しが生む3つのリスク

「費用が高いし、今後さらに上がるのも分かった。でも今は完全に壊れていないから、もう少し様子を見よう」。実は、この「様子見」にも見過ごせないリスクが潜んでいます。完全に故障してから慌てて対応する場合、以下のような問題が発生しやすくなります。

 

  1. 割高な緊急対応費用の発生
    給水ポンプが突然停止した場合、深夜や休日を問わず緊急出動を依頼することになります。仮設ポンプの設置や応急処置には通常の計画工事とは異なる特別料金がかかり、結果的に修繕費全体が膨らむ傾向にあります。
  2. 部品の製造終了による長期断水リスク
    設置から15年以上経過した古いポンプの場合、メーカーでの交換部品の製造がすでに終了していることが少なくありません。「部品さえ替えれば直る」と思っていても手に入らず、新しい設備を発注・納品されるまでの間、マンション全体が長期間の断水状態に陥る恐れがあります。
  3. 見えない劣化の進行と二次被害
    配管内の赤錆による閉塞や金属疲労は、日常の目視点検では把握しきれません。限界を超えると、微細なピンホール(穴)からの漏水が発生し、共用部や階下住戸への水濡れといった二次被害を引き起こすケースがあります。

 

法定点検をクリアしていても、経年劣化は確実に進行しています。限界を迎えてからの「緊急対応」は、計画的な修繕よりも高いコストと居住者様への大きな負担を強いることになりかねません。

 

給水方式変更(受水槽から増圧直結へ)他工法との比較とデメリット

現在、多くのマンションでは、古い「受水槽方式」から、水道本管の圧力を利用して各住戸へ直接水を送る「増圧直結給水方式」への変更が主流です。しかし、専門業者としてはメリットだけでなく、あえてデメリットや他工法(受水槽の新品交換や更生工事など)との比較も包み隠さずお伝えします。

 

【メリット】

  • 衛生面の向上:受水槽という「水溜まり」がなくなるため、水道局から送られてくる新鮮な水をそのまま蛇口から飲めます。
  • 維持管理費の削減:法定点検である受水槽の清掃(年1回)や水質検査の費用が不要になります。
  • スペースの有効活用:受水槽を撤去した跡地を、駐輪場やトランクルーム、防災備蓄庫として活用できます。

 

【デメリットと解決策】

  • 断水時の貯留水がない:受水槽方式なら停電や災害による断水時でも、タンク内の水は一時的に使えますが、直結方式では水道本管が止まると即断水します。(解決策:各住戸でのペットボトル水の備蓄や、自治体の給水拠点の確認など、ソフト面での防災対策を管理組合様と一緒に啓蒙します)
  • 導入条件がある:前面道路の水道本管の水圧や口径が不足していると、増圧直結方式が採用できません。(解決策:工事前の第一段階として、必ず管轄の水道局と協議し、水圧調査を実施して可否を判定します)

 

また、配管を交換せず内部をコーティングする「更生工事」という選択肢もありますが、すでに配管の劣化が激しい(残存肉厚が薄い)場合は施工できず、結局数年後に「更新工事(新品への交換)」が必要になるケースも多々あります。現状の設備状態を正しく診断することが何よりも重要です。

 

よくある質問(Q&A)

Q. 工事中、水はどれくらい使えなくなりますか?

A. 工法やマンションの規模によって異なりますが、給水方式を切り替える日は、共用部・専有部ともに「丸1日(午前9時〜夕方17時頃まで)」の断水が発生するのが一般的です。居住者様への事前告知とご協力が不可欠なため、当社では丁寧な説明会の開催や掲示物の作成からサポートいたします。

 

Q. 管理組合の修繕積立金が足りない場合、どうすればいいですか?

A. 設備改修に特化した金融機関の融資を活用する管理組合様も増えています。また、当面の急場をしのぐための「部分改修」と、将来の「本工事」に分けたフェーズ分け提案も可能ですので、まずは現状の予算感をご相談ください。

 

Q. 見積もりをとるのに費用はかかりますか?

A. 基本的な現地調査と概算お見積もりの作成は無料で行っております。(※水道局への詳細な事前協議や設計図面の作成が必要な段階になると、設計調査費が発生する場合がありますが、事前に必ずお伝えします)

 

まとめ:手遅れになる前に、まずは現状把握とプロへの相談を

この記事でお伝えしたかったのは、「工事費用は上がり続けており、今後も下がる見込みはない」という厳しい現実と、「先延ばしにして事故が起きた際の代償は計り知れない」という事実です。

 

マンションの給排水設備は、人間の体で言えば「血管」です。表面上は綺麗に見えても、内側では確実に動脈硬化(劣化や錆)が進んでいます。理事会で「高すぎるからまた来年考えよう」と結論を出す前に、ぜひ一度、給排水設備を専門とするプロフェッショナルにご相談ください。

 

記事では書ききれない、お住まいのマンション固有の配管ルートの複雑さや、自治体ごとの助成金の有無など、個別事情に応じた最適な改修プランをご提案いたします。

 

「うちのマンションの場合、費用はいくらになる?」「まずは配管の劣化状況を調べてほしい」など、少しでも不安を感じられましたら、下記の問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。私たちが責任をもって、管理組合の皆様に寄り添ったサポートをさせていただきます。

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