1. 排水管工事の検討で直面する「3つの悩み」
マンションの長期修繕計画において、排水管の更新(交換)または更生(ライニング)工事は、理事会の皆様にとって非常に頭の痛い問題かと存じます。
私たち給排水設備の専門業者が日々、管理組合様からご相談をいただく中で、皆様が直面されている悩みは、大きく分けて以下の3つに集約されます。
- 居住者様の負担(在宅日数・生活制限)はどれくらいか?
- 高騰する工事費用と、修繕積立金の予算が合わない。
- 管理会社任せでよいか、直接業者に頼むべきか、判断がつかない。
これらは、技術的な工法の話以前に、組合運営と居住者様の生活に直結する深刻な課題です。本記事では、専門業者の視点から、これらの悩みの「実情」と「今、本当に考えるべきこと」を解説します。
2. 悩み①「在宅日数」:なぜ業者で工期が違うのか?
工事の検討が始まると、居住者様から「結局、何日間在宅すればいいのか?」「工事中、トイレはずっと使えないのか?」というご質問が必ず寄せられます。
実際、複数の業者から見積もりを取ると、同じ工事内容でも「A社は4日」「B社は5日」といった提示がされることがあります。専有部の作業日数が異なることはあまりなく、たまにあるくらいですが、全体工期については多少、各社で異なります。この違いはなぜ生じるのでしょうか。
- 理由1:無理な工期短縮の提案
「日数が短い」提案は、一見魅力的に映ります。しかし、それは「作業員を詰め込む」「トラブルを想定しない」無理な計画である可能性も否めません。結果として、「時間内に作業が終わらない」「管理が行き届かずミスが起きる」といったリスクを居住者様が負うことになります。 - 理由2:現場状況の想定の違い
築年数が経過したマンションでは、図面通りでない配管(例:DVLPから耐火VPへの交換が必要な箇所など)や、1階天井裏の施工性など、現場特有の課題が隠れています。これらをどれだけ事前に想定し、工期に組み込んでいるかで、業者の「誠実さ」と「技術力」に差が出ます。
ちなみに、居住者様からよくある「工事期間中ずっと排水が使えない」というご不安についてですが、これは誤解です。排水管工事は、原則として「作業時間外(例:夕方17時~翌朝9時)」は通常通り排水(トイレやお風呂)が使用できるよう、工程を組むのが一般的です。生活しながら工事は可能であり、この点を明確に説明できるかどうかも、業者を見極めるポイントです。
「どうしても在宅が難しい日がある」という場合は、鍵のお預かり方法(例:管理会社様経由、ドアノブ設置型の鍵ボックス)や、作業開始時の「封印シール」貼付など、セキュリティと安全性を担保する対策をご提案いたしますので、ご相談ください。
3. 悩み②「費用」:物価高騰と修繕積立金予算の深刻なギャップ
現在、多くの管理組合様を最も悩ませているのが「費用」の問題です。
皆様のマンションの長期修繕計画は、いつ作成されたものでしょうか。もしそれが10年、20年前に設定された予算に基づいている場合、現実に深刻な問題が発生しています。
ご存知の通り、昨今の世界的な物価高騰により、配管の材料費や人件費は、この数年で1.5倍から2倍近くにまで跳ね上がっています。しかし、修繕積立金は急には増えません。
「計画では予算が組まれているのに、いざ見積もりを取ったら予算を大幅にオーバーしている」
「他の修繕(大規模修繕など)にもお金がかかるのに、どうすればいいんだ」
これは、数多くのマンションなど、多くの現場で私たちが実際に直面している課題です。そして残念ながら、今後この工事費用が劇的に下がる見込みは、専門業者の視点から見て「非常に低い」と言わざるを得ません。
4. 悩み③「業者選定」:なぜ信頼できる業者が見つからないのか
費用と工期の問題に直面した組合様は、「信頼できる業者」探しを始められます。しかし、ここにも大きな壁があります。
「管理会社やコンサルタントに依頼すれば、その分費用が高くなるのではないか」
「かといって、自分たちで直接業者を探そうにも、どこの誰を信用すればいいか分からない」
「世帯数が少ないと、組合内に設備の専門知識を持つ知り合いもいない」
結果として、多くの管理組合様が、インターネットで情報を検索し、各社のブログや実績を比較検討して、「この会社なら信頼できそうだ」という業者に直接問い合わせる、という時代に入っています。
だからこそ、私たち業者は、皆様が本当に知りたい「実情」を発信していく責任があると考えています。
5. 【専門家からの提言】今、排水管工事の「計画」を急ぐべき最大の理由
物価高騰は深刻ですが、実はそれ以上に深刻な問題が「人手不足」です。
排水管工事のような特殊な技術を持つ職人(技術者)は、急には増えません。むしろ高齢化などで減少傾向にあります。その結果、何が起きているか。
それは、「工事の予約待ち」です。
これは病院の予約と似ています。腕の良い医者(信頼できる業者)には患者(工事依頼)が集中しますが、医者の数(職人の数)は限られています。結果、「来年の何月まで予約でいっぱいです」という状況が、この業界でも当たり前になりつつあります。
今、皆様が直面している現実は、「先延ばしにすればするほど、費用は上がり、やってくれる業者(職人)は見つからなくなる」というリスクです。
だからこそ、物価が下がるのを待つのではなく、「1年後、2年後に確実に工事を行う」ために、今すぐにでも計画を立て、信頼できる業者を決め、契約(予約)を抑えておくことが、資産価値を守る上で最も賢明な判断となります。
6. 待ったなしの設備改修。まずは「学ぶ」ことから
排水管工事は、管理組合の皆様ご自身が「学ぶ」ことで、費用を抑え、リスクを回避できる可能性が格段に上がります。
私たち専門業者は、皆様が判断に迷われた際の「信頼できる相談相手」でありたいと考えています。排水管の状況調査、長期修繕計画の見直し、予算組みのご相談など、どのような初期段階のお悩みでも構いません。
工事の「予約」が取れなくなる前に、ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。