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設備コラム マンション排水管更新工事管理組合老朽化対策設備改修長期修繕計画
2025.10.24

マンション排水管工事、「更新」と「更生」どちらが正解? 管理組合の最適解を解説

 

マンションの長期修繕計画において、築30年を超えると漏水リスクが高まる「排水管」の対策は、避けては通れない重要課題です。

管理組合の皆様が必ず直面するのが、「古い管を丸ごと交換する(更新工事)」と「古い管の内部を再生する(更生工事)」という2つの選択肢です。

 

「更生の方が安いと聞くけど、耐用年数は?」
「住民負担(騒音)が心配だが、長期的に見たらどっちが得なの?」

 

このように、どちらの工法が自分たちのマンションにとって最適なのか、悩まれている管理組合様は非常に多いです。

 

この記事では、給排水設備改修の専門家として、両工法のメリット・デメリットを整理し、皆様のマンションの「予算」「住民の合意」「将来計画」に合わせた最適な工法を選ぶための「判断基準」を徹底解説します。

 

1. 排水管工事の2大選択肢:「更新工事」と「更生工事」とは?

まずは、2つの工事が根本的に何が違うのかを簡単にご説明します。

 

① 更新工事(=交換)

概要: 既存の古い排水管(鋳鉄管など)を物理的に撤去し、まったく新しい配管(耐食性に優れた塩ビ管など)に交換する工法です。
特徴: 配管システムが物理的に「新品」になります。

 

② 更生工事(=再生・ライニング)

概要: 既存の古い排水管は撤去せず、その内部を高圧洗浄や研磨で徹底的に清掃・下地処理した後、樹脂やFRP(繊維強化プラスチック)でコーティング(ライニング)し、内部から配管を再生・補強する工法です。
特徴: 古い管を「ガワ(外側)」として利用し、その内部に新しい管(ライニング層)を作ります。

 

2. 「更新工事(交換)」のメリット・デメリット

「すべてを新品にする」更新工事。その最大の魅力と、最大のハードルについて解説します。

 

メリット(魅力)

  1. 圧倒的な信頼性と資産価値の向上
    配管が物理的にすべて新品(多くは腐食しない塩ビ管)になるため、漏水リスクを根本から解消できます。期待耐用年数は40年~50年以上と最も長く、長期的な信頼性は抜群です。「配管交換済み」であることは、将来の売買時などにおいて資産価値として明確に評価され、大きく貢献します。 
  2. 長期的なコストパフォーマンス(LCC)
    初期費用は最も高くなりますが、耐用年数が最も長いため、40年、50年スパンで見た場合のライフサイクルコスト(LCC)は、結果的に最も安くなる可能性があります。

 

デメリット(ハードル)

  1. 非常に高額な一時コスト
    配管材料費に加え、既存の配管を撤去するために壁や床を壊す「解体・はつり工事」と、それを元に戻す「内装復旧工事」が必須となります。これにより、工事費用は更生工事の1.5倍~2.5倍以上になることも珍しくありません。 
  2. 住民への負担(騒音・工期)
    解体作業(はつり)で、数週間~数ヶ月にわたり、比較的大きな「騒音」「振動」「粉塵」が発生します。また、工期が長引き、その間の断水も発生するため、在宅時間の長い住民(特に高齢者や乳幼児のいるご家庭)への負担が大きくなります。

 

3. 「更生工事(再生)」のメリット・デメリット

次に「今ある管を活かす」更生工事です。その現実的なメリットと、専門家として知っておいていただきたい注意点を解説します。

 

メリット(魅力)

  1. 住民への負担が最小限
    最大のメリットはこれに尽きます。壁や床を「壊さない」ため、更新工事のような解体・はつり作業がありません。したがって、騒音・振動・粉塵がほとんど発生せず、居住しながらの工事が比較的容易です。 
  2. 工期が短く、一時コストが安い
    解体・復旧作業がない分、工事期間は短く(数日~)、工事一時金も更新工事に比べて安く抑えられます。 
  3. コンクリート埋設配管でも施工可能
    更新工事では物理的に交換が困難な「コンクリートに埋め込まれた配管(躯体埋設管)」であっても、内部から再生できるケースが多いです。

 

デメリット(注意点)

  1. 工法によって「耐用年数」が全く違う(最重要!)
    ひとくちに「更生工事」と言っても、樹脂を塗るだけの「塗布工法(期待耐用年数10年程度~)」から、FRPなどで強固な管を内部に形成する「自立管工法(期待耐用年数40年程度~)」まで様々です。見積もりを取る際は、工法名と「期待耐用年数」を必ず確認してください。 
  2. 劣化が酷すぎると施工不可
    あくまで古い管をベースにするため、洗浄や研磨で穴が開いてしまうほど腐食が進行している場合(特に排水管の「腹(底)」部分)は、施工できない、あるいは保証が出ない可能性があります。 
  3. 資産価値として評価されにくい
    これは管理組合様の視点として重要です。「更生工事」はあくまで既存配管の「延命措置」と見なされることが多く、「更新(交換)」のように「配管が新品になった」という明確な資産価値の向上としては評価されにくい傾向があります。将来的な売買や資産評価において、プラス材料になりにくい点は考慮が必要です。

 

4. 【判断基準】あなたのマンションはどちらを選ぶべき?

 

A. 「更生工事」が適しているマンション

  1. 建て替え計画が近い(例:10年~20年以内)
    理由: 高い費用をかけて「更新」しても、建て替えで無駄になってしまいます。耐用年数10年~の安価な「更生工事(塗布工法など)」で、建て替えまで「持たせる」のが最も合理的です。 
  2. 修繕積立金(予算)が不足している
    理由: 「更新」したくても予算がない場合。まずは漏水事故を防ぐため、比較的安価な「更生工事」で当面のリスクを回避するのが現実的な選択です。 
  3. 住民の合意形成が困難(高齢者・在宅者が多い)
    理由: 「更新工事」の騒音・振動・長期の工事負担に、住民が耐えられない(合意が得られない)場合。住民負担の少ない「更生工事」が唯一の選択肢となることも多いです。

 

B. 「更新工事」が適しているマンション

以下は、将来の資産価値と根本的な解決を重視し、「更新工事」を選択することが最善と考えられるマンションの例です。

  1. 建て替え計画が全くない(あと40年以上住み続ける)
    理由: これから先、何十年も住み続けることが前提であれば、信頼性と長期的なコストパフォーマンス(LCC)、そして資産価値のすべてにおいて最も優れる「更新工事」が最善の選択と言えます。 
  2. 予算(修繕積立金)の目処が立っている
    理由: 一時コストの問題がクリアできるなら、最も根本的な解決策である「新品への交換」を選ぶべきです。修繕積立金が潤沢なケースだけでなく、将来の資産価値を守るため、金融機関からの借入なども含めて予算を確保し、更新を選択される管理組合様も少なくありません。 
  3. 住民の理解と協力が得られる(重要)
    理由: 「将来の資産価値のため」という共通認識のもと、工事の騒音や工期といった「一時的な負担」を受け入れる合意形成ができているマンション。

 

5. まとめ:「更新」と「更生」、何を優先して選ぶべきか

「更新工事」と「更生工事」、どちらかが絶対的に優れているわけではありません。

 

  • 長期的な資産価値と根本解決を最優先するなら「更新工事」
  • 工事の一時コストと住民負担の低減を最優先するなら「更生工事」

というのが、工法選択における基本的な考え方です。

 

最も重要なのは、噂やイメージで判断せず、まず配管内カメラ(内視鏡)などで排水管の劣化状況を正確に診断することです。
その上で、「このマンションにあと何年住むのか」という将来計画と予算を照らし合わせ、住民全員で納得できる工法を選択してください。

 

排水管の現状診断・改修工事のご相談はこちら

私たちカンパネ株式会社は、マンションの給排水設備改修を専門とするプロフェッショナル集団です。
多くの実績に基づき、管理組合の皆様のご予算、将来計画、そして住民の皆様のご負担を考慮した最適な改修計画をご提案いたします。

「まずは、うちのマンションの配管がどうなっているか診断してほしい」
「更新と更生、どちらが良いか専門家の意見が聞きたい」

といったご相談から、喜んで承ります。排水管の問題でお悩みなら、ぜひ一度お問い合わせください。

 

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