近年、世界的な課題としてカーボンニュートラルの実現が求められており、
その達成に向けた様々な技術開発が進められています。
今回はその中の一つである「人工光合成」についてご紹介します。
人工光合成とは、その名の通り、植物の「光合成」を人工的に再現しようとする技術です。
植物は太陽光エネルギーを利用して、水と二酸化炭素(CO2)から栄養素を作り出しますが、これを模倣し、
太陽光、水、そしてCO2を原料として、社会に有用なエネルギーや物質を創出するのが目的です。
この技術の中核となるのが「光触媒」などの特殊な材料で、太陽光を受けることで、水を水素と酸素に分解したり、
CO2を他の物質に変換したりする働きをします。
これにより生成されるのは、次世代のクリーンエネルギーとして期待される水素や、合成燃料やプラスチック製品の
原料となるメタノールなどの基礎化学品です。
人工光合成の大きな利点は、地球温暖化の原因となるCO2を、単に削減するだけでなく、
新たな価値を持つ「資源」として再利用できる点にあります。
また、天候さえ良ければ国内でエネルギーを生産できるため、エネルギー安全保障の観点からも重要視されています。
この技術は基礎研究の段階に留まらず、社会実装に向けた具体的な計画も進められています。
環境省が策定したロードマップでは、2030年頃に一部技術の先行的な利用を開始し、2040年には本格的な
量産化を目指すという目標が掲げられています。
持続可能な社会を構築していく上で、エネルギーや資源のあり方は非常に重要なテーマです。
人工光合成は、その未来を左右する可能性を秘めた技術として、今後の動向が注目されます。
出典:脱炭素ポータル(環境省) https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20251003-topic-78.html
ST